気ままに文学を

一般の小説や同人誌の作品の感想を述べていきます。

12<< 12345678910111213141516171819202122232425262728293031 >>02

プロフィール

sanzo-iwaki

Author:sanzo-iwaki
メリー・ホプキン〔英〕は今でも聴きます。
毎週更新!が目標。今後の予定。カズオイシグロ、村上春樹、水村美苗、群系各評論。


最新コメント

最新トラックバック

カテゴリ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

永野悟「戦争と文学」『群系』第27号

●永野悟「戦争と文学-文化的視点からの概観-」『群系』第27号掲載。
 永野悟さん(『群系』主宰)は昔からの知り合いです。かつて仕事の上で大いにお世話になりました。通信上のやりとりは続いていましたが、昨年末、十何年かぶりで再会しました。お世話になった人なので、面白い批評があったらココで感想を述べていきたいと思っています。

『群系』誌はわりと分厚い。よって新しい号が送られてきても関心の持てそうないくつかの作品しか読まない。27号の永野さんの評論も読んでいなどころか、気付いてもいなかった。それで、読んでみるとかなり興味深いことを書いている。
 戦争は「文化」であるとするクレフェルト『戦争文化論』なる書があるとは知らなかった。確かにそうした観方は一考に値すると思う。
「戦争を、人間の文化とする見方は新鮮で、それは単に人々の憎しみから起こる忌避すべき事態、という従来の見方による袋小路から解放する」
 うーん、そうかもしれない。
 戦争論を論ずるとなれば、歴史上の何世紀かに渡る長いタイムスパンで見ていかないとその本質には迫れない。そうしたところを的を射て言及していった点は感心する。論題の「概観」の名にふさわしいだろう。また、クラウゼヴィッツ『戦争論』、カール・シュミット「友敵論」、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』など、軍事論・政治論の古典的著書に言及していることは、筆者永野さんの関心の広さを知らされた。
 テーマは戦争と文学の関連なのだが、日本近代の戦争に関わる文学作品をよく調べている。
「戦争を人間文化の一典型とみるならば、華々しい虚飾の場面と酷薄な人間疎外の極みとを、両面ともども受け止めていかねばならない」
 これは結びの部分だが、考えさせられるものはある。
「特集」を概観する内容の批評なのだから巻頭あたりに持ってきてもよかったのでは、と私は思った。

永野悟「戦争と文学」
『群系』第27号
スポンサーサイト

赤坂真理 『東京プリズン』

 赤坂真理の作品で読んだのは『ヴァイブレータ』『ミューズ』『彼が彼女の女だった頃』だったが、性をテーマとする作家だと思ってきた。しかし、この『東京プリズン』には驚かされた。この人にこれだけのストーリーを書く力があるとは思いもよらなかった。
『東京プリズン』は敗戦、天皇、憲法を初めて文学にした小説だと思う。かつ戦後日本にたいして痛烈な問題提起をしている。
「読み終わった時、戦後史について、日本という国の精神誌について、新しい像が生まれていることに気づく」(池澤夏樹)、「これは世界文学である。今すぐ各国語に翻訳して欲しい」(いとうせいこう)、「これこそが文学の仕事だろう」(石原千秋)、「文学史上きわめて重要な問題作だ」(田中和生)、「この気宇壮大な力作に、私は感動した」(松浦寿輝)、以上は帯の言葉だが、私は全部肯定したい。
「゛天皇は、国とピープルの統合の象徴であり、彼の地位の派生してくる源は、主権を持つピープルであって、他のいかなる源でもない゛
 頭の中で翻訳が確定する。驚く。
 これって、まんまじゃん! 私たちの憲法、まんまじゃん! いや、私たちの国の憲法が、ほとんどこのまんまじゃん! 文末が少し違うだけだ。」(292頁)
 マリのこの驚きこそ真っ当な気持ちと言えないだろうか。

『東京プリズン』は真理は2012年の第66回毎日出版文化賞、第16回司馬遼太郎賞を受賞している。

東京プリズン東京プリズン
(2012/07/06)
赤坂 真理

商品詳細を見る

 | ホーム | 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。