気ままに文学を

一般の小説や同人誌の作品の感想を述べていきます。

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プロフィール

sanzo-iwaki

Author:sanzo-iwaki
メリー・ホプキン〔英〕は今でも聴きます。
毎週更新!が目標。今後の予定。カズオイシグロ、村上春樹、水村美苗、群系各評論。


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村上 春樹 『走ることについて語るときに僕の語ること』

村上春樹を最初に読んだのがこのエッセイ集『走ることについて語るときに僕の語ること』だった。これはなかなか面白く読みごたえがあった。フルマラソンになんどか挑戦していたころでもあったのでいろいろと参考になった。(続く)

村上春樹は年に一回はどこかのフルマラソンに出ている、と書いている。おそらく現在もそうなのだろう。
1996年にはサロマ湖100キロウルトラマラソンに参加し、11時間42分で完走している。このサロマ湖マラソンや、ギリシャ・マラトンコースの単独マラソンなど、マラソン体験記としてはけっこう面白い。著書の締めくくりのコトバには胸を打つものがある。既に決めている自分の墓碑銘である。

  村上春樹
  作家(そしてランナー)
  1949-20**
  少なくとも最後まで歩かなかった 
            
 これまで私は5回フルマラソンを走ったことがある。5時間から6時間のタイムだったが、この時間帯の人たちは30㎞も過ぎると多くの人が歩いている。マラソンなんだから意地でも歩かないぞという意志で毎回臨んだものの、私の成績は棄権が2回、膝通で30㎞過ぎて歩いたのが1回、文字通りの「完走」は2回だった。
 「少なくとも最後まで歩かなかった」……染みるコトバである。                     

 この本の第2章には、春樹がどのようにして作家になったかが綴られている。ジャズ・クラブを経営していた頃の1978年4月1日、神宮球場でヤクルトの試合を観戦しているときに、降って湧いたかのごとく「小説を書こう」と思い立ったという。それで書き上げた作品が『風の歌を聴け』だった。こうした経緯もなかなか面白い。


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カズオ・イシグロ『私を離さないで』

 かつてカズオ・イシグロの『日の名残り』(邦訳)を読んで静かな感銘を受けた。しんみりとした余韻を残す小説である。カズオ・イシグロは長崎出身の日系二世で英国に住んでいる。その後、イシグロの作品を読むことはなかったが、昨年『わたしを離さないで』Never Let Me Go がテレビで採り上げられことで、何年も前から話題になっていることを知り、それで最近読んでみた。
 どんな話か端的に言うと、二十世紀後半、臓器提供のためにこの世に生まされたクローンの青年たちの話である。クローンを作るのは現在、国際法でも日本の国内法でも禁じられており、ありえない話である。あり得ない話をイシグロはあえて物語にした。実は臓器提供の目的で教育されていることを子供たちは成長するにつれ教えられていき、成人してからはその「任務」についていく。逃げ出すことはしない。脱走者はいくらでも出そうな気もするが、イシグロは話をそう設定しない。あり得ない話であるが、とてつもない想像力でイシグロは話を組み立てた。アマゾンのコメントを見ると感動的なストーリーとして評価する人たちが多いが、私は感動というところまではいかない。しかし、生命とは?寿命とは?ということを深く問いかける作品であることは間違いない。
 昨年、映画が上映されたが、私は映画を先に見てから小説を読んだ。これは少々失敗した。映画は小説の半分ほども表現できていないと思った。小説を先に読んだ方がよかった。
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三浦哲郎『蟹屋の土産』

三浦哲郎の短編小説はもう全部読んだだろうと思っていたが、まだあった。1980年代前半に出された『蟹屋の土産』がそれで、題名も知らなかった。ただ10編収録されているそのなかで「余命」という作品はどっかで読んだと思う。
心打つのは「お菊」である。あるタクシー運転手が県立病院から着物姿の若い女性を乗せるという話である。あとは書かないほうがいいだろう。
もう一つは書名の「蟹屋の土産」である。「旧友」との再会であるが、それは中学時代の剣道部で、自分が憎みしごきを加えた級友である。作家とは自分の恥も晒さなければならないのだろうが、しかしそれもまた十分に読ませるのである。プロはやはりプロです。


蟹屋の土産


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大堀敏靖「大東亜戦争と日本人╶╴文学者の日記から」『群系』28号

 かつてのあの戦争を、今回の大震災と重ねて論じた好エッセイだと思います。従来「大東亜戦争」擁護の論というと高村光太郎や三好達治ぐらいしか援用されず、あの有名詩人たちがあれほどの怒りを米国に感じていたのだから、いかに日本が追い込まれていたか分かるという論法に留まっていました。しかし筆者・大堀さんは、ドナルド・キーンに採り上げられた、高見順、野口米次郎、伊藤整、横光利一、山田風太郎らの日記を示すことで当時の日本人の戦争に対する心情を重層的に論じています。その論調は冷静でもあります。たとえばこういうところでしょう。
「「愚かな侵略戦争を戦いアメリカに民主化された軍国日本」という教育を受けてきた戦後生まれの私には、開戦時の作家たちの高揚した日記には「本心だろうか」と疑う気持ちが未だにぬぐえないものがある」
「このように敵意むきだしである。平和教育を受けて、話し合いで世界平和を、と教えられてきた私たちには、「そこまで言うか」である」
 ドナルド・キーンの言葉にも興味深いものがあります。
「「源氏物語」のような繊細で美しい文学を生み出す日本人がなぜ大陸や海洋に飛び出してあのような大規模な戦争を起こしたのかということだろう」
 こういう部分は考えさせられるものがあります。
 筆者の評論展開は多角的で従来にはない斬新なものがあり、  そういう点で好エッセイというべきでしょう。
 現在の中国がいかに「民度」が低いかということもわかりました。
 戦争をめぐる議論として厄介なのはそうした中国や、韓国です。19世紀後半、両地域は国民国家というにはほど遠く、当時の列強の力関係に翻弄されざるを得なかった。ナショナリズムが芽ばえてきたのはそれ以降のことです。侵略だと言って日本のことが許せないのは、昔は東アジアの先進国だったという歴史上のプライドからくるものでしょう。日本はこれについてどう相手をしていったらいいんでしょうね。
 最後に、アメリカは「太平洋戦争」とは言っていないそうです。「第二次世界大戦の太平洋戦線」と言っているんだそうです。また現在の日本の歴史研究者の間には「太平洋戦争」という言い方はやめ、「アジア太平洋戦争」と言おうという動きがあるそうです。しかし山室建徳という人はそれも太平洋戦争の亜流の言い方であるから、包括的にはやはり大東亜戦争がよいだろうと言っています。

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野口存彌「大田洋子と原子爆弾」

野口存彌「大田洋子と原子爆弾──人間の不幸へ注ぐまなざし」『群系』28号

あー、いい文章いい作品を読んだ!
有意義な時間だった。筆者へ。有り難うございます。

野口さんとはむかし何度かお会いしたことがあります。ずっと年下の者が言うのも畏れ多いことだが、この作品は秀逸、傑作だと思います。評論というには厳めしくなく、評伝というにはそれ以上のものがあり、物語性をもって読者を引き込むという点においてこれは「小説」というべきでしょう。

なめらかな文章。滞りのない文脈。かつ一つ一つの展開に内容の濃さがあります。用いている文献は少ないにも関わらず、それらを繋げ深みを持たせているのは、人事や社会やものの見方についての筆者の見識でしょう。原爆の惨状を描く大田洋子とそれを引用する筆者の気概が一体化しています。

【良かったと思った表現】107 頁
「特殊なと言ってもいい題材と向き合いながら、作者としての力量を存分に発揮している。二十世紀最大の事件だったと受け取れる原子爆弾の投下という問題をとりあげて、投下された側の視点でその状況を克明に語り尽くし、現代の文学としての屈指の重要な作品となった。」

【興味深い箇所】109 頁
「…そうした経過のなかで、アメリカ占領軍が大田洋子が『屍の街』の出版を意図していることを把握した模様である。昭和二十二年二月と推定されるある朝、村の子どもがひとりのアメリカの兵士と日本人通訳を大田洋子の借りている家の前に案内してきた。」


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